体内での鉄の働きを知っていますか?
私たちの体内には、3~5gの鉄が存在し、大部分がヘモグロビンとして赤血球中に含まれています
赤血球の寿命は120日で、毎日赤血球の1/120が破壊され、その分骨髄と呼ばれる血液を作る組織で新しい赤血球を作っています
私たちの体から、胃や腸などの消化管や汗や皮膚細胞に含まれる鉄が1日に2〜3mg程度失われていますが、普通に食事が取れている場合は、おおよそ1〜2mg/日程度の鉄分が十二指腸から吸収されて体内に補充されます
よって鉄が不足することはありません
ではなぜ貧血が起きるのでしょうか?
今回は鉄欠乏性貧血についてお話ししていきます
原因は、大きく3つに分けられます
①鉄分の需要増加
思春期や妊娠女性は特にこれに当てはまります
月経過多の状態にあると、出血量が通常の月経よりも増えるため、鉄分が不足します
妊娠中は、胎児と胎盤の発育に通常の5〜6倍の鉄分が必要となるため、鉄不足を引き起こします
②鉄供給の低下
鉄の吸収不足や吸収不良が挙げられます
食事から鉄分を摂取しても、胃や腸の病気があるとうまく吸収してくれません
胃炎やヘリコバクターピロリ菌の感染、胃の手術、炎症性腸疾患がある場合は鉄分をうまく吸収できず、貧血になるケースが多いです
③鉄の喪失
一時的な怪我による出血だけでは、貧血にはなりません
慢性的な出血として、消化管出血や婦人科疾患などがあります
痔や肛門などからの出血や、胃や腸などの消化器の潰瘍や癌による消化管出血は、出血に自覚症状がないため注意が必要です
症状は、多くは無症状で、健康診断の採血結果で指摘されることが多いです
徐々に、動悸や息切れ、疲労感・倦怠感、顔色不良や味覚障害など、悪化するにつれて強く出現し、日常生活に大きな影響を与えます
ほかにも、イライラ感の出現や爪が荒れたり異食症(氷や粘土などの非食用のものを食べたくなる)が出現したりします
また、重度の場合は輸血が必要になるケースもあるため、症状の出現が見られたらすぐに受診しましょう
主な治療としては、薬物療法が用いられます
内服薬による副作用の出現が激しく出る場合は、注射による治療もありますが、まずは内服療法から始めていきます
・フェロミア
・フェルム
・インクレミン
・フェローグラデュメット
があり、どの薬剤でも効果は変わりませんが、飲み方や錠剤の好みで使い分けていきます
鉄剤を開始すると2〜3週間で改善し、その後ヘモグロビンが上昇していきます
鉄剤を内服する際の注意点として、副作用の出現です
薬中の鉄がいや十二指腸で放出されるため刺激が強く、悪心嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状が10〜20%の割合で出現することがあります
これらの消化器症状は1〜2週間程度で改善しますが、症状が強く出現している場合は鉄剤を変更したり、飲む時間を変えたり、減少したりすることで対処できます
必ず主治医や薬剤師へ相談してください
貧血の予防として、食事から鉄分を摂ることも効果的です
内服治療と併用して、食事生活を見直してみましょう
1日に必要な鉄分量は、
女性:18〜64歳 は6.5mg
65歳以上は6.0mgです
男性:18〜74歳 は7.5mg
75歳以上は7.0mgです
特に鉄分が豊富な食材は、豚・鶏レバーや赤貝、めざしやまいわし、かつお・まぐろなどの魚介類、小松菜やほうれん草、えだまめ、ひじきなどの野菜類、プルーンやチョコレートも鉄分が含まれています
動物性のものだけでなく、植物性のものも併用し、バランス良く鉄を摂取しましょう